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ガラスコーティングの硬度とは?9Hの意味とキズ耐性を実測データで解説

カーコーティングを検討していると、「9H」といった硬度表記を目にする機会が多くあります。
一般的には、数字が大きいほど「傷が付きにくい」「強度が高い」という印象を持たれやすい指標です。

一方で、こうした硬度表記が「どのように測られた数値なのか」を知らないまま判断されているケースも少なくありません。

コーティング被膜の厚みは、一般的に約1ミクロン前後とされています。
これは人間の髪の毛(約70ミクロン)を70分の1にしたほどの、きわめて薄い膜厚です。

このような極薄の被膜が、塗装本来の性質とは切り離されて「9H」といった数値で語られる場合、
その数値がどのような条件で評価されたものなのかを理解することが重要になります。

実際、コーティングの硬度は、材料そのものの性質だけで決まるものではありません。
下地となる塗装の硬さ、被膜の厚み、摩擦のかかり方、表面の滑りやすさなど、複数の要素が重なり合って評価されます。

本記事では、カーコーティングにおける「硬度」という言葉が、どのような尺度で測定されているのかを整理しながら、数値だけでは判断できない本質的な考え方を解説します。

「硬い・柔らかい」という単純な比較ではなく、実際の使用環境で何が傷の発生を左右するのか。
その判断軸を、専門的な視点から紐解いていきます。

この記事の要点

カーコーティングの「硬度」を正しく理解するうえで、押さえておきたいポイントは以下のとおりです。

  • 「9H」などの硬度表記は、測定方法によって意味が異なり、実際に塗装へ施工した硬度は異なります。
  • カーコーティングの硬度は、コーティング剤単体の性能だけで決まるものではなく、下地となる塗装の硬さ、表面特性の影響を強く受けます。
  • 実使用環境における「傷の付きにくさ」は、硬度の高さだけで決まるものではなく、被膜構造、滑り性といった複数の要素が重なり合って生まれます。
  • 硬度の数値だけを比較しても、コーティングの本質的な性能や実用性を正しく判断することはできません。重要なのは「どれだけ硬いか」ではなく、実際の使用環境でどれだけ安定して美観を維持できるかという視点です。

硬度の尺度は2つ|モース硬度と鉛筆硬度

項目モース硬度鉛筆硬度
本質素材の硬さを比べた順位表面の傷つきにくさ
評価対象素材そのもの表面硬度
膜厚考慮しない影響を強く受ける
下地考慮しない強く影響する
摩擦・滑り性考慮しない結果に大きく影響

カーコーティングの硬度を理解するには、まず「硬度には複数の尺度がある」という前提を押さえる必要があります。一般的に使われる指標には、「モース硬度」と「鉛筆硬度」の2つがあり、どちらも硬さを示す数値ではありますが、評価している対象や意味は大きく異なります。

モース硬度とは、鉱物の硬さを「どちらが傷つくか」という基準で並べた硬度尺度です。滑石(1)からダイヤモンド(10)までの鉱物を基準に、鉱物同士をこすり合わせ、傷がついた方を硬度が低いと判断します。

たとえば、ルビー(モース硬度9)では傷がつかず、ダイヤモンド(モース硬度10)では傷がつく鉱物があった場合、その鉱物は9と10の中間に位置するものとして、「モース硬度9.5程度」と評価されます。

このようにモース硬度は、鉱物同士を直接こすり合わせて比較する、非常にシンプルな評価方法で、あくまで硬さの序列を表す相対的な指標です。

一方で、カーコーティングにおいて重要なのは、硬化したコーティング剤そのものの硬さではなく、塗装の上に塗り込まれた状態での「表面の傷つきにくさ」です。そのため、鉱物単体の硬さを比較するモース硬度は、カーコーティングの硬度を説明する指標としては適していません。

カーコーティングで使われる「鉛筆硬度」とは

そこで、カーコーティングの表面硬度を評価する際に用いられるのが、引っかき硬度(鉛筆法)による「鉛筆硬度」です。鉛筆硬度試験では、10H〜10Bまでの硬さの異なる鉛筆を一定の条件で塗膜表面に押し当て、どの硬さの鉛筆で傷が入るかを確認します。

この方法を用いることで、コーティング剤を実際に塗布した「塗装表面としての硬度」を評価できるようになります。一般に「9Hコーティング」と表現される場合、これは9Hの鉛筆で引っかいても傷が入らなかった、という結果を示す指標です。ここまでが、一般的によく目にするカーコーティングの硬度に関するメーカー説明になります。

しかし、この鉛筆硬度による評価には、見落とされがちな重要な前提条件があります。それは、コーティングの硬度は、コーティング剤単体の性能だけで決まるものではなく、下地となる塗装の硬さに強く依存するという点です。

一般的な目安として、国産車の塗装硬度はおおよそ2H前後、輸入車では3〜4H程度とされることが多く、同じ「9H」を謳うコーティング剤であっても、2Hの塗装に施工した場合と、4Hの塗装に施工した場合とでは、鉛筆硬度試験の結果が変わってしまうことになります。

さらに、塗装面の傷の入りやすさは、硬度だけで決まるものではありません。表面の滑り性(スリック性)も大きく影響します。滑り性が高く摩擦が少ない表面では、同じ硬度条件であっても傷が入りにくくなるため、鉛筆硬度の数値だけで実際の耐傷性を判断することはできません。

つまり、モース硬度はもちろん、鉛筆硬度による評価であっても、数値だけを切り取ってしまうと、実際の使用環境を想定した「コーティングによる傷の入りにくさ」を正確に表すことはできず、あくまで条件付きの理論値として捉える必要があるということになります。

実測検証|鉛筆硬度試験で見えた現実

それではここから、前項までで解説してきた内容について、実際に引っかき硬度(鉛筆法)による測定を行い、検証結果を確認していきます。

まず、コーティングを施工する前の塗装面について鉛筆硬度試験を実施したところ、下地となる塗装の硬度は3Hであることが確認できました。

次に、この塗装面に対して「9H」と表記されるセラミックコーティングをテストパネルに施工し、施工後は十分な硬化時間を確保するため、3週間放置して完全硬化させた状態で再度測定を行いました。

その結果、9Hセラミックコーティングを施工したテストパネルの鉛筆硬度は4Hという結果になりました。

この検証結果から分かるのは、「9H」と表記されるコーティングであっても、実際に塗装面へ施工した状態では、鉛筆硬度として9Hを再現することは難しく、最終的な硬度は下地となる塗装の硬さに大きく依存する、という点です。

さらに、1層施工で9Hに到達しないことを踏まえ、施工回数を増やした場合についても検証を行いました。4層、10層と塗り重ねた状態で測定を行った結果、コーティングの膜厚や鉛筆硬度の数値において、明確な変化は確認されませんでした。

当社では、カーコーティングにおける「硬度」とは、塗装本来の硬度を基準として、数十%程度向上させる性質のものであり、塗装の硬度を大きく飛び越える数値を示すものではないと考えています。
そのため、硬度という一つの数値だけでコーティング性能を判断することはできません。

試験箇所ごとの鉛筆硬度を記載
試験装置を0.5〜1.0mm/sの速度で押し出し測定
鉛筆硬度を変えながら順番に測定

コーティングの性能は硬度だけでは測れない

ここまでの検証から、コーティングの硬度という指標は重要な要素の一つではあるものの、実際に塗装へ施工した際の再現性には限界があること、そしてコーティングによる「傷の付きにくさ」は、硬度という数値だけでは表すことができないという点をご理解いただけたかと思います。

このセクションでは、その理由をより具体的に示すため、イギリスのセラミックコーティングブランドGTECHNIQ(ジーテクニック)が公開している研究データを参照します。

一般的な硬度9Hセラミックコーティング
GTECHNIQセラミックコーティング

上記の画像は、左が一般的な9H表記のセラミックコーティング、右がGTECHNIQのセラミックコーティングを施工し、同一条件下で擦り傷テストを行った際の表面状態を比較したものです。

一般的なセラミックコーティングでは、塗装表面に被膜が「層」として形成されるのに対し、GTECHNIQのセラミックコーティングは、塗装表面に浸透・結合することで硬化し、塗装そのものの密度を高めながら性能を発揮する設計思想を採っています。

その結果、単純な鉛筆硬度の数値では同等であっても、表面の滑らかさが大きく向上し、摩擦が抑えられることで、実使用環境における擦り傷が入りにくくなります。

この比較画像から分かるように、傷の発生状況には明確な差が見られますが、これは硬度だけの違いによるものではなく、被膜構造、表面密度、摩擦特性といった複合的な要素の違いによって生じた結果です。

つまり、カーコーティングの性能は「どれだけ硬いか」という一点だけで評価できるものではなく、塗装とどのように結合し、どのような表面特性を持つかという視点で捉える必要があるということになります。

まとめ|後悔しにくいカーコーティング選びのために

カーコーティングの「硬度」は、一つの目安にはなりますが、それだけで性能や価値を判断できる指標ではありません。
モース硬度や鉛筆硬度といった数値は、測定方法や前提条件によって意味が大きく変わり、実際に塗装へ施工した状態では、下地となる塗装や表面特性の影響を強く受けます。

また、実使用環境における「傷の付きにくさ」は、硬度の高さだけで決まるものではなく、被膜構造や表面の密度、滑り性、摩擦のかかり方といった複数の要素が関係しています。

カーコーティングは、数値やキャッチコピーだけで選ぶものではありません。
正しい知識をもとに判断することで、初めて愛車の美観と価値を長く支える存在になります。

arinomama Professionalでは、実際の使用環境下でこそ美しさを維持できる、本質的な効果を体感できる世界的セラミックコーティングブランドを取り扱っています。
下地処理にこだわった全国の施工店ネットワークを通じてご案内していますので、ぜひお近くの施工店までお気軽にお問い合わせください。

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